外国人がシニアが無職が、アパートを借りるってどんな? #006

これからお話しするのは、日本でのアパート探しで、心が折れそうになった時のお話です。
20数年ぶりの物件探しはハードルが高かった!
私は「SUUMO」というアプリを使って物件探しをしました。日本に来る前からある程度リサーチしていたので、相場や手続きなどは心得ていました。そもそも25年前までは日本にいたので、アパート探しがどういうものか、知っていました。
渡米前の東京生活、アパートを借りる場合、礼金・敷金各2ヶ月、当月家賃1ヶ月、不動産手数料1ヶ月と、家賃6ヶ月分は用意しなくてはいけないものでした。東京生活では吉祥寺や渋谷に住み、計5回ほど引っ越しをしています。
バブル時代を生きていた頃は、ブイブイ言わせていたかもしれません。
いつの間にか日本は、礼金敷金なしとか、手数料割引とか、家賃そのものも、25年前から上がっていないように見えました。何があったのか知らないけど、そのおかげで、自分が外国籍であることも、50代後半であることも、無職であることも、それほどのハンデではないように感じてしまいました。
でも、アメリカから送った物件への問い合わせメールの返事は、楽しいものではありませんでした。
「シニアや無職であることは問題ないけど、外国籍はだめ」
「定職のない人は入居できない」
「この物件は男性限定です」などなど。
断られるうちに入った変なスイッチ
東京の全てのアパートがそうであるとは思えなかったし、根気良く探せば、内見させてくれるところはあるだろうとは思っていましたが、想像するよりも、アパート探しは手強いと覚悟しました。
かくいう私もアメリカでアパートを一部屋所有しており、現在人に貸しています。ですから、貸す側の気持ちはよく分かっているつもりでした。「なぜ貸してくれないの!」などとキレることなく、断られたら「そうですよね。わかります」と、あきらめも早かったのでした。
外国人専門の不動産業者や物件もあります。しかし、比較的高額なことと、国立のロケーションがいいという気持ちもあり、断られ続けるうちに、いつか変なスイッチが入ってしまい、「絶対、国立の普通のアパートに入居する」と意地になっていました。
家賃の設定を下げることにしました。支払い能力のハードルが低くなると思ったのです。国立は学生が多く手頃な家賃のアパートも多くあります。入学シーズンも去り、借り手のないアパートの中から、家賃3万3000円のとあるワンルーム物件に惹かれました。
駅歩8分。日当たり良好。冷蔵庫・洗濯機、エアコン付き。小さなユニットバスとベランダもあります。写真を見ると内装はきれいだし、空も大きく見えました。
物件を紹介している業者に連絡し、自分のステイタスなどを細かく説明、内見の日取りまで決めるところまで漕ぎ着けることができました。
私はこの時、地方の実家に身を寄せていて、この内見のために上京しました。ところが着くやいなや、「大家さんが外国人はダメと言っている」と知らされました。
「えええ? メールでは問題ないと言っていたじゃないですか」と、この時ばかりは、食い下がりました。「仮契約するつもりで上京したんですよ!」とも。
業者さんは、大家さんに電話してくれました。
「今、お客様が来ているんですが…」。業者さんは汗をかきながら、
「日本語話す外人さんなんです。日本語は大丈夫なんです」と説明しています。
さらに、私に「あのう、日本語は読めますか」と聞いたので、即座に
「読めます。漢字も大丈夫です」と答えている自分。
しかし、結果はダメでした。やはり外国人はお断りだと。
「ただの学生アパートじゃないですか」と泣きそうな声で言うと、「学生の場合、家賃は親が払うので、むしろ歓迎されるんです」と言う。
「ぐぅう…」。
がっくり肩を落として私は店を出ました。どこかおかしい。なぜ外国人はだめなの。
アメリカでは、職探しはもちろん、アパート探しでも、「外国人を排除する行為」は法律で禁じられています。だから、私の場合、何の問題もなくアパートを見つけることができました。逆差別になるだろうけど、日本人はむしろ歓迎されました。
「どうしよう」と思いながら、国立の街をぶらぶら。不動産の軒先の張り紙を見てまわると、別の不動産業者も先ほどと同じ物件 -あの外国人お断り物件- を張り出していました。
だめもとで飛び込み、「先ほどこの物件から『外国人はだめ』と言われたのですが、どうしてもだめでしょうか」と聞いてみました。
たまたまだったのですが、その業者は大家さんとの付き合いが古く、快く説得に応じてくれました。そして、ものの数分で仮契約OKとなりました。ただし保証人と保証会社を介入させての契約を条件に。
この人に出会わなかったら、私は心折れたまま、実家に帰ったことでしょう。
引っ越ししようと思ったものの、「また外国人扱いか…」
外国人というだけでダメというのは差別です。たまに「外国人歓迎」などという張り紙をした不動産業者も見かけますが、言いようのない違和感を感じます。
多文化共生社会の講座を受けたことがあります。「外国人が近隣の日本人と揉めることが多いという偏見」があるということでした。ゴミ出しや騒音問題は、外国人だけによるものではない、日本人が引き起こすケースがほとんどだ、と講師は言っていました。
入居して私が悩まされたのは、同じアパートの入居者による騒音、ゴミ出し、タバコ臭の問題でした。階下の住人が帰ってくると、G軍団がわらわらと私の部屋にあがってくる(泣)。それでも再び物件探しをすることを考えると、引っ越ししようとは考えられませんでした。
入居して3年以上経ち、非常勤として勤めていた会社から正社員採用され、引っ越しを決意しました。新たなアパート探し… 「また、あの不当な外国人差別と向き合うのか」と暗澹たる思いになりました。でも、次の物件探しは、すんなりと決まり、在留カードの提示もなく、保証人も要りませんでした。おそらく会社勤めをしていたことが大きなメリットだったからでしょう。
家賃は2倍以上になってしまったけど、もっと早く引っ越せばよかったと思っています。
玄関入るとすぐ階段、という作りは、膝変形関節症泣かせですが、新築同様で隣家の騒音もなく、冬でも天気のいい日は暖房をつけなくてもいいほど暖かいです。
お見せできないのが残念ですが、エントランスもなかなか素敵です。心なしか宅配の人も丁寧に対応してくれます。不満があるとすれば、アパートの名前が長すぎることぐらいでしょうか。
今回の引っ越し体験は、最初のアパート探しの苦い思い出を上書きしてくれたように思います。
無職になり、どんどんこれからシニア街道をまっしぐらするわけで、東京での引っ越しは、もう無理なのではないでしょうか。先のことは考えないようにしよう…
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
アメリカにアパートを所有しているって? と引っかかった方がいらっしゃるかもしれません。アメリカでのアパート購入については、いつかお話しできればと思います。