ピアノ教室に通わないことにした。
ピアノレッスンを受けるかどうか、まずはトライアルレッスンに通って決めることにして、さすがプロの指導が入るとこうも違うのかと実感したものの、一方で、日頃の練習が驚くほどつまらなくなってしまった。
「間違いなく弾けるように」「次のレッスンで褒められるように」などと、いやらしい気持ちばかりが先行して、ちっとも楽しくない。
3回のトライアルだったが2回でレッスンをやめることを告げた。その途端、家レッスンは以前のように楽しさを取り戻した。
人前でピアノを弾くとか、すごく上手くなりたいとか、確かにそういう下心もないわけではないけど、自分の好きなように好きな曲を弾くのが性に合っているようだ。
好きなものがある日突然ストレスになることはある。高校生から愛用していた布製の小物袋。ついに破け、繕ったものの、使い勝手が悪くなった。物を取り出す時に引っ掛かる。小さい障害ながらもこれがストレスだと気づき、手放した途端スッキリした。
お世話になった先輩とは30年以上の付き合いがある。感謝の気持ちもあり、定期的に会ってはきた。しかし、先輩に会うことがストレス以外の何物でもなかった。ある日、後ろめたさを乗り越えたら、気持ちが楽になった。
蛇口からよく外れる浄水器。大してメリットのないポイントカード。なんか小汚いスポーツジム。他人から見たら笑っちゃうような理由でバッサバッサと手放してきた。
病気とか家族とか、手放したくても手放せないストレスもある。だから、とるに足らないような小さなストレスが積み重ならないように、心の整理整頓している。
定年を迎え、もう若いとは言えない年齢だから、色々なものが手放しやすくなってきた。歳をとるのも悪くはない。