2023-1-17 映画『土を喰らう十二ヶ月』を観てきた
沢田研二主演の『土を喰らう十二ヶ月』を観てきた。信州の古民家に住み庭や山で採れた食材を使い料理を作る作家の生活を描いた水上勉の原作。
ニューヨークに住むライターの友人がどうしても観たいということで代わりに観てきた。代わりに観たとて「良かったよ」と報告するしかないのだが。
11月に封切られた映画は、現在都内では銀座と東青梅の2館のみで上映されている。東青梅の映画館に行ってみたら、昭和レトロのおしゃれな映画館で、説明によると建物は国登録の有形文化財に登録されている都内唯一の木造建築の映画館とのこと。
ニューヨークの友人は田舎生活にあこがれている。マンハッタンに住み働きつつ、自宅では糠漬けを仕込み、休日は山の見えるキャンプ場で過ごす。映画の主人公のような生活は、彼女にとって理想の生活なのだろう。
久しぶりに見る沢田研二は、自然に歳をとっていてステキだった。彼が歌う映画の主題歌は昔の声のまんまではないか。
映画『人生フルーツ』にも通じるものがあって、自然の食材で、じっくり手をかけて料理にしていくところが映画の随所に登場する。ジュリーの大きな手が米を研いでいるだけでも、なんかおいしくしあがりそう。出てくる料理の全てが魅力的だった。
↓ここから映画のネタバレ
なぜ、ジュリー演じるツトムは、自分で誘っておきながら、田舎に引っ越してくると言う恋人(松たか子)と別れてしまったのだろう。前妻の遺骨とともに暮らしてきたツトム。一見、男のエゴにも見える後半のストーリー展開ではあるが。自分自身が死と直面したことによって、長年手放せなかった妻の遺骨を湖に送り、いっしょに生への執着も手放したのだろうか。ツトムは床につく時、「みなさん、さようなら」と呟く。その日その日を生きるツトムの新しい生き方に、若い恋人を突き放した理由があるのかもしれない。
松たか子はすごい俳優さんだ。映画だが舞台を見ているように、彼女の姿に目が奪われる。火野正平、奈良岡朋子、この映画に出てくる俳優も存在感がある。日本を離れしばらく(スクリーンの中で)会わなかった俳優がいい味を出していた。
食べることは生きること、といいつつ、作中に登場する料理はおいしそうだが、見ているだけで血圧があがりそうな塩分高めのものだった。タクアンをばりばり食べるシーンなど、見ている私の口がしょっぱくなる。ツトムが倒れた時、「ほらみたことか」と言いそうになった。
地下水を引いた昭和風のタイル張りのシンクや、薪を使ってご飯を炊く釜戸など、料理好きには魅力な台所の作りだろうし、昔ながらの道具や和食が映える食器たち。だけど、私は見ているだけで疲れてしまう。ゴマを擦っているシーンはこちらも腕が痛くなった。
こんな生活はクソ面倒臭い。
田舎生活はあまり肌に合わない。自然は好きだけど、不便な暮らしは苦手だ。都心にほどよく近くで、書店もスーパーも病院も図書館も徒歩圏内で、窓の外から電車が走っているのが見えたらなお良い。理想の暮らしは今の暮らしなのだ。田舎に行きたくない。
なんてことを言ってしまうと、友人が気にするので、何も言わずしらーっと映画を観に行った。「いやー、やっぱりあなたこそが観るべきよ」と帰りの電車からメッセージを送った。
手に出来合いのお弁当をぶらさげて帰宅した。